五味太郎さんについて
「死ぬまでに会ってみたい人 トップ10」をつけている。
ミーハーと言われようと、村上春樹や糸井重里、さくらももこに私は会いたい。価値観にひどく共感はしても、その才能には決して届かず、だからこそ、強く強く憧れる。
そのランキングに、五味太郎さんも入っている。
五味太郎さんは、数多くの絵本を出版している、国内でも屈指の絵本作家だ。
誰もが一度は読んだことのある作品は、やっぱり「みんなうんち」だろうか?
ひとこぶらくだは ひとこぶうんち
ふたこぶらくだは ふたこぶうんち
それは うそ
というフレーズは、あまりにも有名。
ひねくれ者の私にとって、心の底から、素直にまっすぐ「大好き」と思えるものは数少ないが、五味太郎さんのことは小さい頃から大好きだった。
だって、まず絵が大好きだ。
五味太郎さんの描く子どもは、いつだって、生き生きしていてわんぱくだ。よーく世の中を見て、よーく考えている。常識にとらわれていない。
だから生意気で、ときにいたずらっ子で、たまに大人びていて、それがとっても愛しいのだ。
五味太郎さんの絵を見ると、五味太郎さんが子どものことを全然なめていない(むしろ尊敬している)のがよくわかる。
ストーリーも好きだ。
シュールで、ユーモアがある。
大人は絵本に、教育や道徳の意味を込めたがるけど、そんなものはちっともない。
でも、だから子どもたちは、五味太郎さんの絵本が理屈なしに大好きで、夢中になるのだと思う。
そんな五味太郎さんに、本屋のイベントで一度会ったことがある。(正確には「見た」かもしれない)
見た目は、いい具合に年季の入ったオールドスポーツカーさながらの、イケてるじいさんという感じだった。年齢を重ねているのに、五味太郎さんには悪ガキの空気が漂っていた。格好良かった。
そのイベントでの、五味太郎さんの言葉が忘れられない。
“わかんないけど、いんだよなあ。がいいんだよ”
もちろん頭で理解できて素晴らしいと分かることも良いことだけど、探しても理由はなく、なぜか分からないけど「いいなあ」と思うことこそ、本当に素晴らしいことなのかもしれない。
今は、なんでも理由を探して、答えを一つに絞ってしまいがちだけど、曖昧で混沌とした気持ちこそ、本当の気持ちなのかもしれない。
きっと、五味太郎さんは「わからないけど、いい」という理屈を越えた境地を目指し続けているんだ、ということが過去の作品から一貫して伝わってきた。
おすすめしたい本は数あれど、本日は、大人向けの本をご紹介する。
絵本をたくさん出版されている五味太郎さんだが、これは大人が感じる問題に焦点をあてた一冊。 五味太郎さんが、子どもについて、社会について、真剣に考え向き合っているのが分かる。
ポートランドについて
ポートランドを知っているか?
ポートランドはアメリカの北西部(緯度は北海道の稚内市と同じ!)に位置する、人口60万人程の中規模都市だ。
ナイキやコロンビアの本社が近くあり、独立系広告エージェンシー・ワイデン+ケネディの拠点でもある。
つい3年前まで、私はその存在すら知らなかった。(一見した際、ポーランドかと思った)
きっかけは、ポパイの2014年7月号。ただこの時も、ふ~ん、へ~えと思うくらいであまり気に留めはしなかった。
ただその後、ポートランドがきているのだ!という実感は、周りに起こる小さなムーブメントから次々と感じることになる。
例えば、サードウェーブコーヒーといわれる新しいコーヒーの形。サードウェーブといえば、カルフォルニア発祥のブルーボトルコーヒーが代表格として有名ではあるが、ポートランドもそのメッカとして知られている。
またクラフトビール、Farm to tableなどもさかんで、あの村上春樹も「おいしいレストランがたくさんある」と絶賛するなど、「食」の分野で注目が高まっている。
ポートランドが注目されているのは、食だけではない。
最も関心が集まっているのは、その「街づくり」といっても良いだろう。
ポートランドの特筆すべき開発事例のひとつに、「パール地区」という元倉庫群の大規模開発がある。「ミクストユースト」という考え方を軸に取り組まれたこの開発は、職(オフィス)・住(住居)・遊(商業)が一体となった街づくりを行っており、都市部で問題となっていた空洞化が解消され、昼夜どの時間でも、街に賑わいが絶えない。
実は先日、そのポートランドを初めて訪れた。
念願の訪問だった。
冬は雨期だというが、私が滞在した4日間はこの時期では珍しいほどの快晴が続いた。
街の第一印象は、いちいちオシャレ・・・。単純だが、そう強く感じた。
ストアデザイン、ロゴ、サインなど細部にわたるまで、最先端のクールでモダンなデザインが垣間見えた。ただ、それだけではなく、古い建物をリノベーションして新旧がうまく融合をしており、なんともいえないいい味が出ているのだ。
また、住民の「ローカル志向」が強いため、チェーン店がほとんどないのも特徴で、カフェやビール、本屋にいたるまで、ここにしかない個性的なショップが続くため、買い物狂の好奇心もくすぐる街であることは間違いない。
ただ、これだけでは足りない。可能であれば、ぜひ街の人に話を聞いてみてほしい。
私も今回の訪問で、数人のポートランダーにインタビューをする機会を得たが、彼らの通底した価値観には「稼ぐことより、生きること」があった。
それは、ただの「夢追い人」の姿ではなく、消費社会が飽和した現代において、「次世代の新しい生き方」を体現しているように、私には感じられた。
日本でも今後、人口減少は続くし、経済もゼロ成長になる。
大それた話だが、未来の日本人の形もここポートランドにあるのではないか、と私は信じている。
私の考えを築いてくれた、二冊を紹介する。
ひとつは、ポートランド市開発局(PDC)で唯一の日本人である、山崎満広さんの著。
PDCは政府と民間をつなぐ、日本には見られない形の組織で、ポートランド開発の礎を築いた組織だ。
歴史から街づくり、PDCの体制まで、詳細に記述されている。
そして、もう一つ。
吹田良平さんの本は、ハードだけでなく人々の志向など、ソフトの部分にも光を当てている。
グリーンネイバーフッド―米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた
- 作者: 吹田良平
- 出版社/メーカー: 繊研新聞社
- 発売日: 2010/08
- メディア: 大型本
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ポートランドはまだまだ発展途中の街。
これからも、ずっと、注目していきたいと思った。
信頼について
- 作者: 糸井重里
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2014/11/06
- メディア: 文庫
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- 作者: 山岸俊男
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/06
- メディア: 新書
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- 作者: 佐久間裕美子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2014/07/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「物欲なき世界」を読んだ
きょうは本の話。
先日、菅付雅信の「物欲なき世界」(平凡社)を読んだ。
よく流通・小売の世界では、モノではなく「コト消費へ」なんて言っているけど、それはたんなる消費のトレンドなのではなく、これからの経済状況に裏付けられた、未来への兆候なのだと思う。
「ノームコア」も「ミニマリズム」も、これから起こる大きな潮流の一つだと考えれば、自分では納得がいく。
「借金の時代はモノが主役だったが、貯蓄の時代となったいま、世の中を動かすのは意味である。私たちは物質主義を捨てて、実のあるものを重んじる姿勢を強めている。何を持っているかよりも、私たち自身に何が備わっているかが大切になってきているのだ」。
近年の傾向である「ライフスタイル重視」や、自分を成長させる習い事や旅などへの消費の高まりをみると、確かにそれはうなづける。
モノをもつことにこだわりを持たない人々の価値観は、ますます「シェア」や「つながり(コミュニティ)」へ。これからは、そんなに多くのお金を持たなくても、暮らしていきやすい世の中になっていくのだろう。(そもそも、多くのお金を持ち得る経済環境ではなくなるので、その状況下の中で欲望がシフトしていっただけかもしれないが…)
では、これからの人々はどんな生き方を選んでいくのだろうか。
興味深い一文が載っていた。
「幸福は、より個人的で、かつ普遍的な価値を共有出来るものに向かう。」
「他社とも価値観を共有出来る『いい物語をもった人生』が最大の幸福になるだろう。」
人間、見た目より中身。お金より幸せが大事。
なんとなく、フーテンの寅さんあたりが言いそうな台詞だけど、虚勢でも見栄でもなく、それが一番大切になる時代がもうそこまで来ているのかもしれない。
そんなこれからの時代に向けて、私が注目している言葉は「信頼」。
つぎは、次のキーワードになる(であろう)「信頼」についてもう少し丁寧に書きたいと思う。